I saw Bibi!
5年前、この本を初めて手にした時の感覚は、今まであまり感じたことがない不思議なものだった。
まず、表紙の 強烈に不気味だが、ちょっぴりユーモラスで可愛いさのある絵に釘付けになった。
まるでフリーダカーロの絵を初めて観た時のような、
幼い頃、怖いのに網戸に止まる蛾の裏側をじいっと見つめていた時のような感覚。。笑
パラパラと中を覗いただけで、そこから只者ではないエネルギーを感じて、ゾクゾクした。
本から感じる圧倒的な生命力に惹かれ、早速息子と一緒に読もうとしたが、当時3歳の息子には「こわい。やだ。」と、断られた。
私でもなんだか怖いのだから、確かにまだ早いのかもな?と思い、いつか読めるその日まで。と、本棚に大切に閉まっておいた。
それが一昨日の夕食後、何故だかふと思いたち 5年ぶりに本棚から引っ張り出してみた。
8歳になった息子なら、もう理解もできそうだし、「どれだけ恐ろしい結末なんだろう?」と 一抹の不安もあったけれど、「嫌だったら途中で辞めればいい!」と思い、恐る恐る2人で読み始めた。
冒頭から、歪んだおどろおどろしい文字。
字体が大きくなったり 小さくなったり、文章のリズムも良く、私も音読しながら 自然と気持ちが入っていく。
不思議な力が働いて、生まれつき盲目だった少年「ホタル」の目が 7時間だけ見えるようになる。
その間に起きる出来事が描かれているのだが、
登場人物達が次に何を言い出すのか、何をするのか全く予想がつかない。
2人で台詞に大笑いしたり、絵をみながら 「こんな風にみえるね!」とか「僕だったらこうしたい。」などと話し合ったり、ふいに感動して泣いてしまったりも(私が) した。
夢中で読み進め、気づくとあっという間に読み終わっていた。
なんだか実際に 奇妙な大冒険をして帰って来たかのような、リアルでヒリヒリとした感触が残っていた。
本を閉じてから眠るまで、心細いのか 私の側を離れようとしなかった息子。
きっと、彼の中にも鮮烈な印象を残した体験だったに違いない。
前から息子と本を読むことは好きだったが、大人も子どもも ここまでドキドキしながら読み進められる本には なかなか出会えない。
今の息子と一緒に読めて 本当によかった。
色々な問題が飛び交う この世の中。
ビビを見た!は、私達に問いかけてくる。
私達は、本当にちゃんと眼が見えているのだろうか?
物事の本質に気付けているのだろうか?
美しいものに焦点を当てよう。
人は、すぐに忘れてしまうけど。
私にとって「美しいもの」とは一体なんだろう?
「ビビを見た!」には、「今 」を生きろ 、本当に生きろ、という強い強いメッセージがスピリットの様に宿っていた。
読み終わった今も そのスピリットは、ジワジワと私達の中で発酵し続けている。